30代未婚の現実は、どこまでも厳しい・・・!『東京タラレバ娘』(1)
あらすじ
『5キロ痩せて、今よりキレイになったら、もっといい男が現れる!』
『その人を、好きになれればケッコンできる!』
そんなタラ・レバを言っているうちに、気が付けば33歳、独身、彼氏なしの三重苦主人公・鎌田倫子。
『あのとき、ああしていたら』・・・
『もっと頑張ってれば』・・・
タラレバ続きで、このまま独りで生きていく? そんなの、耐えられない!!タラレバ娘たちの、明日はどっちだ!?
『主に泣いてます』『海月姫』などで人気の、東村アキコ先生の新作です。31歳独身のワタクシとしては、あらすじを読んだだけで非常に「怖い」テーマなのですが、発売直後からネットでも話題になっていたため、誘惑に負けて購入しました。
本作の主人公・鎌田倫子(33)は、この第1巻の前半で「10年前にフッた男に逆に失恋(?)」し、後半では「若さを武器にした新人に仕事を奪われ」ます。散々すぎる展開ですが、そこはさすがの東村作品。爆死しては飲んだくれる倫子たち「アラサー女子」達の、魂の叫びと葛藤が痛快に描かれます。
タラレバ言ってもしかたがない?恋も仕事も30女は「お呼びでない」?じゃあ、どうしろっていうんだ、バカヤロー!!
読者としても、倫子ら「タラレバ娘」たちの主張にウンウンと頷きながら、(問題は何も解決していないのだけれど)なんとなくすっきりした気分になれます。
さすが東村先生や・・・そこいらに転がる、我々の心の地雷を踏み抜いていく凡百の少女マンガたちとは、ひと味もふた味も違うぜ・・・と、東村節に酔いしれ、なんとなく成仏できそうになった読者の心。
だがしかし。
現実は、甘くない。そして本作品だって、甘くはないのです!この1巻のキモは、ラストの1話、さらには最後数ページにあると言っても、過言ではないでしょう。
1巻のラスト数ページに仕込まれた、倫子に訪れる圧倒的な『少女マンガ的展開』。
それを目にしたとたん、気持ちよく成仏しそうだった私の心には、滝のように冷や水が浴びせられ・・・読了した目の前には、読む前よりも厳しく感じられる現実が、静かに広がるのでした。
『どれだけ倫子達に共感したって、しかたがないタラ!!』
『お前の生活は1ミリも変わらないレバー!!』
タラちゃんとレバちゃん(作中で、酩酊状態の倫子の目の前に現れて彼女を厳しく叱咤激励?する、白子とレバ刺しの妖精さん達)の声が、聞こえてくるよう・・・。このあと、丸1日打ちのめされた気分が持続するほどに、なかなか素敵な読書体験でした(遠い目)。
ネタバレになるため、ラストの詳細は避けますが、リアル・タラレバ娘たちの心を気持ちいいほど打ちのめしてくれる(そしていつかはまた、励ましてくれる?)快作に違いありません。