ワークブックルーム営業日誌

大阪の漫画ブックカフェ&ワークスペース「Waq Book Room」のブログです。

このリズム、読んで「体感」してほしい!『すみっこプリマ U-15』(1)

 

すみっこプリマ U-15 1 (リュウコミックス)

すみっこプリマ U-15 1 (リュウコミックス)

 

あらすじ

泉中学校の筋肉フェチ少女・タンゴは、転校してきた美少女・ボタンの均整のとれた肢体に一目ぼれ。自分が所属するフットサル部に勧誘する。見学に行ったボタンは、成り行きでチーム戦に参加することになり・・・

泉中学女子フットサル部、始動します!

 

巷で、『コマ割りが面白い』と話題になっていたことで知った作品です(⇒『すみっこプリマ U-15』は「スポットライトを浴びるプリマたち」になるだろう - たまごまごごはん)。そんな話題性と、表紙の絵柄やデザインにも惹かれ、全くの初読で購入しました。

まず、コマ割りについて。四コマ漫画表現の新境地についての話題は、これまでも耳にしたことがありました(⇒イラスト性と漫画性が高度に融合した、神秘的な世界観の4コマ漫画――はりかも『夜森の国のソラニ(1)』 - よつぎりポテト)。ただ、四コマ的手法でスポーツマンガ、しかもフットサルという、『ボールが横に動く』競技を描くというのは初の試みなのではないでしょうか。

 そんな風に気構えして挑んだものの、実際に読んでみると・・・すごく自然にするすると読めて、ちょっと拍子抜けしてしまったくらいでした。

作者さん自身、後書きで『最初4コマ、途中からノーマルのコマ割りにシフトしていく』『結果的にイレギュラーな見た目のマンガ』と仰られていますが、何も気負わずに最初から読んでいけば、そのイレギュラーさが「鼻につかない」。奇をてらって押し付けてくる感じはありません。むしろ、縦方向のコマの幅は、読者の読み進めるテンポを計算して構成されているので、とても読みやすい。変則だけど、とっつきにくさは無く、むしろコマ割りなどを意識せずに気軽にマンガを読む人なら、「普通のマンガとどこが違うの?」と言っちゃいそうな雰囲気です。

このコマ割り、『作品にメリハリをつける手段として』三ツ沢先生自身が始めた手法で、連載にあたって編集部もその形式を採用したとのこと。ちょっと話がズレますが、最近はWebやスマートフォンの縦スクロール形式に合わせたマンガ構成が重視されるケースもあり、縦方向の視線移動・テンポのつけ方を考える上でも、本作は成功例としてお手本になるんではないでしょうか。

 

 twitterより。

 

・・・と、結局コマ割りの話に行数を割いてしまいましたが、個人的には、本作の推しは画作りよりもストーリー(本題ここから)。

本作のような、フェティッシュな絵柄と洗練された画面構成、とくれば、実際のところ、お話自体はやや物足りない作品も少なくありません。正直、本作も、冒頭の第1話を読んだ時点では、控え目で受動的な主人公に加え、一斉に登場したフットサル部メンバーもキャラがつかみきれず、そのまま本格的な試合シーンへと突入してしまったため、読み手としてはいまいち乗り切れないところがありました。

ただ、2話以降は一転して、各話ごとに、その1話でつかめなかったキャラクター達一人ずつをメインに据えたお話となっており、この各エピソードがとても良い!中学生らしい悩みを抱えた女の子達の姿が丁寧に描かれています。試し読みの機会があれば、ぜひ2話以降まで読んでくださいね!

というわけで、「フットサル部」という入れ物の中で女の子達がキャッキャする話かと思えば、ガチなフットサルの試合の描写で裏切られ、でも作品の肝は試合ではなくキャラクター達の内面描写にあるという、何度も想定を超えてくれた1冊でした。

もちろん、学園ものらしい「女の子がたくさん出てくるマンガ」としての楽しみもありますし、単純な属性ではなく、体格や言葉遣いなどディテールからキャラクターが浮かび上がってくる様は「ツウ好みの萌えマンガ」と言ってもよいのではないでしょうか。

1巻終盤では、キャラクター紹介が終わり、初めての他校との練習試合の話に突入しています。2巻以降、どのようなバランスで話が構成されるかはわかりませんが、主人公・ボタンのことが、まだほとんど語られていないので、その描かれ方も楽しみです。