このリズム、読んで「体感」してほしい!『すみっこプリマ U-15』(1)
- 作者: 三ツ沢大介
- 出版社/メーカー: 徳間書店
- 発売日: 2014/10/11
- メディア: コミック
- この商品を含むブログ (2件) を見る
あらすじ
泉中学校の筋肉フェチ少女・タンゴは、転校してきた美少女・ボタンの均整のとれた肢体に一目ぼれ。自分が所属するフットサル部に勧誘する。見学に行ったボタンは、成り行きでチーム戦に参加することになり・・・
泉中学女子フットサル部、始動します!
巷で、『コマ割りが面白い』と話題になっていたことで知った作品です(⇒『すみっこプリマ U-15』は「スポットライトを浴びるプリマたち」になるだろう - たまごまごごはん)。そんな話題性と、表紙の絵柄やデザインにも惹かれ、全くの初読で購入しました。
まず、コマ割りについて。四コマ漫画表現の新境地についての話題は、これまでも耳にしたことがありました(⇒イラスト性と漫画性が高度に融合した、神秘的な世界観の4コマ漫画――はりかも『夜森の国のソラニ(1)』 - よつぎりポテト)。ただ、四コマ的手法でスポーツマンガ、しかもフットサルという、『ボールが横に動く』競技を描くというのは初の試みなのではないでしょうか。
そんな風に気構えして挑んだものの、実際に読んでみると・・・すごく自然にするすると読めて、ちょっと拍子抜けしてしまったくらいでした。
作者さん自身、後書きで『最初4コマ、途中からノーマルのコマ割りにシフトしていく』『結果的にイレギュラーな見た目のマンガ』と仰られていますが、何も気負わずに最初から読んでいけば、そのイレギュラーさが「鼻につかない」。奇をてらって押し付けてくる感じはありません。むしろ、縦方向のコマの幅は、読者の読み進めるテンポを計算して構成されているので、とても読みやすい。変則だけど、とっつきにくさは無く、むしろコマ割りなどを意識せずに気軽にマンガを読む人なら、「普通のマンガとどこが違うの?」と言っちゃいそうな雰囲気です。
このコマ割り、『作品にメリハリをつける手段として』三ツ沢先生自身が始めた手法で、連載にあたって編集部もその形式を採用したとのこと。ちょっと話がズレますが、最近はWebやスマートフォンの縦スクロール形式に合わせたマンガ構成が重視されるケースもあり、縦方向の視線移動・テンポのつけ方を考える上でも、本作は成功例としてお手本になるんではないでしょうか。
『すみっこプリマ』(1)、読み始め。なるほど、4コマ漫画のリミテッドさと自由なコマ割り漫画の中間というかハイブリッドというか、不思議な読み味ですね。感覚的に例えるなら、そう、端正に整えられた盆栽を眺めるかのような……(なんだそりゃ) pic.twitter.com/16r0W1O9Ap
— みやも(大阪府) (@miyamo_7) November 12, 2014
正直、描いてる時は盆栽を剪定してる感あります。>RT
— 三ツ沢大介・すみっこプリマ①発売中 (@tamisoso) November 12, 2014
twitterより。
・・・と、結局コマ割りの話に行数を割いてしまいましたが、個人的には、本作の推しは画作りよりもストーリー(本題ここから)。
本作のような、フェティッシュな絵柄と洗練された画面構成、とくれば、実際のところ、お話自体はやや物足りない作品も少なくありません。正直、本作も、冒頭の第1話を読んだ時点では、控え目で受動的な主人公に加え、一斉に登場したフットサル部メンバーもキャラがつかみきれず、そのまま本格的な試合シーンへと突入してしまったため、読み手としてはいまいち乗り切れないところがありました。
ただ、2話以降は一転して、各話ごとに、その1話でつかめなかったキャラクター達一人ずつをメインに据えたお話となっており、この各エピソードがとても良い!中学生らしい悩みを抱えた女の子達の姿が丁寧に描かれています。試し読みの機会があれば、ぜひ2話以降まで読んでくださいね!
というわけで、「フットサル部」という入れ物の中で女の子達がキャッキャする話かと思えば、ガチなフットサルの試合の描写で裏切られ、でも作品の肝は試合ではなくキャラクター達の内面描写にあるという、何度も想定を超えてくれた1冊でした。
もちろん、学園ものらしい「女の子がたくさん出てくるマンガ」としての楽しみもありますし、単純な属性ではなく、体格や言葉遣いなどディテールからキャラクターが浮かび上がってくる様は「ツウ好みの萌えマンガ」と言ってもよいのではないでしょうか。
1巻終盤では、キャラクター紹介が終わり、初めての他校との練習試合の話に突入しています。2巻以降、どのようなバランスで話が構成されるかはわかりませんが、主人公・ボタンのことが、まだほとんど語られていないので、その描かれ方も楽しみです。