当店的 このマンガがすごい!と思いました 2015
こんにちは、大阪・天王寺の読書&ワークスペース『Waq Book Room』です。蔵書がマンガだらけのブックカフェもとい漫画喫茶として、また、長居歓迎・ネット環境&電源利用自由の小さなワークスペースとして、週末限定で営業しています。
さて、先日、「このマンガがすごい!2015」が発表されましたね!
この機に乗じまして、当店も、マンガを扱うお店のはしくれとして、2014年の振り返りをしてみたいと思います。お店の開店準備に伴い、今年は比較的たくさんのマンガを読みましたが、新刊はあまり読んでいない気がする・・・そんな店主(30代女性)による偏った選評ですが、よろしければご覧ください。
(本当は本家のランキングが発表される前に書き上げたかった記事なのですが、間に合わず後出しになってしまいました)
対象は、このマンガがすごい!に準じて、2013年10月~2014年9月にコミックが発売された作品。オトコ編・オンナ編、それぞれ5作品ずつ選んでみました。
このマンガがすごい!と思いました 2015
オトコ編
今年は、月刊アフタヌーン電子書籍化に伴い、久しぶりにアフタヌーンの毎月購読を始めました。そこで出会ったのがこの作品。中学生時代にちょうどこの時代の詩歌の世界にカブレかけたものの一瞬で挫折した私にとっては、あらゆるタブーをぶち抜いてくるヤバすぎる作品で、震えました。
実在の詩人達を「モチーフ」に、まさに妄想濃度150%でぶつけてくる本作。広くオススメできるものではないですし、自分自身の腐女子としての暗部も照らされるような一品のため、当店にも置いていない(!)のですが、個人的に2014年を振り返ると外せない作品のため、思い切って一番に挙げておきます。
内容についてはこのレビュー記事が詳しいです。
イカれた仲間はだいたい詩人! 日本近代詩のファンタジア『月に吠えらんねえ』 - マンガHONZ
「オタクを卒業できない」 人間にビシビシ突き刺さってくる作品です。
先月発売された第2巻はまだ積読しているのですが(怖くてなかなか読めない)、オタクと加齢、それがもっともシビアに影響するコスプレの世界を描いています。
もともと2013年にちばてつや賞を受賞した読み切り版があり、それが半年後にTwitterなどのSNSで話題に。私もこの時に読みきり版を読んで衝撃を受けたのですが、それを機に今年、連載が開始。読み切り版ではゴスロリと主人公の葛藤でしたが、連載版はコスプレが題材になり、“二次元のキャラクターにいかに近づくか”という命題が付加したことによって、さらにヒリヒリした作品になっています。1巻ではまだ救いがあったのでホッとしましたが、2巻以降ははたして・・・?(怖い!)
<読み切り版> 連載版第1話もWebで読めます。
コンプレックス・エイジ/佐久間結衣 コンプレックス・エイジ 【第63回ちばてつや賞入選作品】 - モーニング・アフタヌーン・イブニング合同Webコミックサイト モアイ
今年、本屋での推され方が尋常じゃ無かった印象の本作。人外×少女というテーマから、奇をてらったお話かと思いきや、内容は英国のクラシックなファンタジーをベースにした丁寧な作品。
インパクトのある「目新しさ」を求めると拍子抜けするかもしれませんが、「意外と最近こういった作品無かったよね?」と個人的にはとても好ましく読めました。最近のファンタジーというと、入江亜紀先生をはじめとするハルタ系作家さんの流れが強かった印象ですが、絵柄の流行が少女漫画に寄りすぎている感もあったため、本作くらいが読みやすい人も多いのでは。これがガンガンの流れを汲むマッグガーデン発というのも個人的には嬉しい。
All You Need Is Kill 2 (ジャンプコミックス)
- 作者: 小畑健,竹内良輔,安倍吉俊,桜坂洋
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2014/06/19
- メディア: ペーパーバック
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全2巻、完結していますが、やっぱり面白かったな、ということで。私は映画版も原作小説にも触れておらず、このコミック版を読んだだけなのですが。ダレずに2巻で一気に決着させた構成も素晴らしいし、何より戦闘シーンなど、緻密でありながらメリハリが利いてスッキリした小畑作画の真骨頂をこれでもかと見せ付けられる快感がやばかったです。
5作品目、迷いましたが、昨年の8位にもランクインしていた『甘々と稲妻』を敢えて推しておこうと思います。
昨年は1巻発売直後にも関わらずトップ10入りを果たした本作。ただ個人的には、「グルメ(お料理)もの」かつ「子育てもの」というウケる要素をこれでもかと盛り込んでいる作品(さらには「教師と女子高生もの」でもある)であり、1巻での上位入賞は、ランキング物でありがちな先走りでは・・・?と感じていました。また、「妻を亡くした子連れ教師が、担当クラスの女子高生と、彼女の家で一緒に料理をする」という、見方によっては「それ、アウトだろ」という設定もどう扱っていくのか・・・2巻以降にあまり期待が持てなかったのです。
しかし、今年、2巻3巻と話が進み、主要キャラクター達の距離も変化したり縮まったりはしているのですが、それをいやらしく見せることなく、とても丁寧に話数を重ねています。1巻よりも、それ以降の展開こそ評価されるべきと思い、今回選んでみました。
オトコ編選外
タイミング的にも、公式のオトコ編1位はこれで間違いないと思っています*1。週刊少年マガジンの懐の深さを見せつけられました。ただ、「自分自身の好み」を突き詰めた結果、5作品からは外しています。
今年出会った作品。古き良き流れを汲むラブコメディ。個人的にすごくツボです!
今年出会った作品その2。みずしな作品は読んだことがあったものの、ムーコのことは今年の夏まで知らなかったので、今すごくマイブームです。
短編を1冊挙げるなら、これを。入学式の日に女子高生の身にふりかかった日常SF。
作者インタビュー&試し読みはこちらから。松井先生の次回作楽しみにしています!
「あの夜、エゾシカをはねなければ、漫画家にはなってない」初単行本『四月八日のまえがきに』発売中、松井信介氏インタビュー - コミスン(comic soon)
みえちゃんち 秀良子名作劇場 1 (ビッグコミックス 秀良子名作劇場 1)
- 作者: 秀良子
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2014/09/12
- メディア: コミック
- この商品を含むブログ (4件) を見る
昨年に引き続き、一般誌での秀先生のご活躍が嬉しい。しかも、相変わらずBL作品も素晴らしいという。ジャンルに関わらず、毎回新作を読むたびに五体投地しています・・・。
この『みえちゃんち』も素敵な短編集なのですが、一般誌の読者さん向けの〝自己紹介〟的な位置付けだと思いますので、あえて選外に。まだまだこんなもんじゃないです、という勝手な期待を込めて。
オンナ編
個人的には本作はオトコ編では?と思うのですが、なぜか昨年のオンナ編ランキングの11位に入っているので、こちらで。今年はアニメのヒットにより知名度が確立され、おそらく男女問わず広く読まれたことと思いますが、巻数を重ねるごとに勢いも増していて、今、とにっかく面白い作品です。
珈琲いかがでしょう 1 (マッグガーデンコミックス EDENシリーズ)
- 作者: コナリミサト
- 出版社/メーカー: マッグガーデン
- 発売日: 2014/09/13
- メディア: コミック
- この商品を含むブログを見る
今年の猛プッシュ枠。
移動珈琲ショップのミステリアスな店主が、いろんな悩みを抱えるお客に珈琲を振舞っていくお話です。珈琲というテーマ、表紙の雰囲気から、ほっこりハートフルストーリーを想像するのですが、お話は予想外に骨太でビター。とにかく、登場人物の追い詰められ方が半端じゃない話が多いのですが、彼らが抱えるのはどれも私達も身に覚えがある悩みばかり。そんな彼らが、珈琲を通してまた前を向いて進んでいこうとする姿に、読者も元気付けられる…意外とパワフルな作品なんです。
1話はこちらから読めます!デフォルメされた絵柄やノリが合わない場合もあるかもしれませんが、2話以降もっと面白いですので、続きもぜひ。
珈琲いかがでしょう/コナリミサト - マッグガーデンコミックオンライン
東村作品、『かくかくしかじか』の話題も多く耳にするのですが、私は不覚にも未読なのでこちらを・・・まだ1巻が出たばかりですが、1巻に詰め込まれたあの勢いと熱量を考えると、選ばざるをえない一作です。
当ブログでのレビューはこちら ↓
30代未婚の現実は、どこまでも厳しい・・・!『東京タラレバ娘』(1) - ワークブックルーム営業日誌
全5巻で完結予定ということですが、4巻も非常に面白かったので!
表紙の5人のキャラクターが、主人公の脳内?で、議論を重ねながら主人公の行動を決定していくという仕掛けが楽しい作品。主人公・一子は、この5人の存在を認識しないので、物語の当初は彼らの会議の結果どおりに動く「器」のような存在だったのですが、物語が進むにつれて徐々に彼女自身のキャラクターが立ってきます。そして、皆がいくら会議を重ねても、結局、一子は不毛な(?)恋に邁進していくことに・・・。
正直、恋のお相手となる男性陣も、そして主人公である一子がとる行動も、読者としては「えー!」っと突っ込まざるを得ないところが多いのですが、世の中ってそういうものだよね・・・!と唸らされます。とはいえ、水城作品の中では、かなりポップに読める作品のはず。独身女性の率直な意見がバシバシ出てくるので、男性には読みづらいかもしれませんが…?
脳内キャラクター達と一緒に「しあわせって何だ!?」と考えさせられます。
最後に何を挙げるか迷ったのですが。巻数の付いてない単巻作品は、今年しかプッシュするチャンスが無いので、本作を。
タイトルどおり、「食べるところ」をテーマにした短編連作集(グルメ漫画には非ず)。多作だし描かれる内容も幅広いヤマシタ先生ですが、私はこれくらいのテイストの作品が好きです。ヤマシタ節ともいえる軽妙な会話劇が中心なのですが、飛び交う台詞からそれぞれのキャラクターを浮かび上がらせていく手腕にはいつも感服します。
オンナ編選外
昨年ぶっちぎりの面白さだった本作の勢いは今年も衰えず。ただ、3巻以降、主人公・みくりが積極的になるに比して露になる平匡氏の「めんどくささ」に、私自身の乙女心が引いてしまって。そんな、平匡さんのアレさこそ、現実でも女性陣が頭を抱えるあるあるなので、読んでて面白いところなんですが・・・私はそこで、みくりのようには頑張れません!(蘇る古傷)。そんな超個人的な理由から5作品からは外してしまいました。
(月刊COMICリュウ掲載なので、オトコ編なのかも、と思いつつ、内容的にはオンナ編だと思います)
実は、Webで1作目を読んだだけで、コミックスをまだ入手できていません。が、この1話だけでコミックスを探し回らせる力があります。早く、もっとたくさんこの著者の作品を読みたい!
というわけで、試し読みはこちらから。
感想と宣伝
いかがだったでしょうか。振り返りながら、自分の守備範囲の狭さをあらためて感じたり・・・(話題作でも読んでいないものが多すぎる)。結果、オトコ編5作品は比較的当たり障りな~い感じになり、一方でオンナ編の偏りが酷い!自意識高い系アラサー女性向けマンガしか読んでない気がします。でも、自分に合わない少女漫画を読むのは、めちゃくちゃヒットポイントが削られる行為なので、どうしても読まず嫌いになってしまうんですよね・・・。
さて、当記事で挙げた作品のほとんどは、当店でもお読みいただけます(『月に吠えらんねえ』『凪を探して』以外のすべて)。ご興味ある方は、当店にも是非遊びに来てください。店主はカウンターでマンガを読みながら、お店番しております!
当店についての詳細は、ホームページをご参照ください。
http://waqbookroom-osaka.jimdo.com/
*1:実際1位でした